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コラム

2019/09/02コミュニティ・カーシェアリング ~日本カーシェアリング協会の取り組み~

ソリューション本部 アドバイザリーサービス部 ヴァイス・プレジデント丸山孝司

カーシェアリングは、マイカーとして車を自己所有するのではなく、登録を行った会員間で特定の自動車を共同で使用するサービスである。マイカーのように駐車場代や保険料などの維持費がかからず、レンタカーに比べ短時間での利用が可能であるといったメリットがあり、日本でも2019年には車両台数約3.5万台、会員数約163万人と急速に拡大をしている。

国内のカーシェアリング車両台数と会員数の推移
国内のカーシェアリング車両台数と会員数の推移

この様に普及するカーシェアリングであるが、この利便性に「コミュニティ」形成の要素を加えた「コミュニティ・カーシェアリング」(以下CCS)という独自の取り組みで被災地支援を行っている「一般社団法人 日本カーシェアリング協会」(以下JCSA)の活動を紹介したい。

JCSAの代表理事を務める吉澤氏が震災時に福島県で支援活動をしていた際、恩師から生活再建に必須の車を地域住民同士が利用できるサービスとして、カーシェアリングを勧められたことがJCSA誕生の背景である。2011年4月、吉澤氏は「会社四季報」を片手に一部上場企業を訪問し車両提供の呼びかけを始め、5月にようやく1台目を獲得、宮城県警や宮城県運輸支局とも詳細な調整を行い、10月には仮設万石浦団地で正式にカーシェアリングを開始した。JCSAの活動は行政の方針とも一致しており、2012年に石巻市が「カーシェアリング・コミュニティ・サポートセンター」を設立。地元の人をスタッフに雇用し、CCSの導入・運営をサポートするという現在のスタイルができあがり、活動は市の委託事業としてさらに発展することとなった。この他にも、石巻専修大学自動車工学コースの学生がタイヤ交換等の各種メンテナンスを行うなど、様々な企業や組織が連携して支えることで成り立っている仕組みである。

CCSの関係図
CCSの関係図

CCSとは、一般的なカーシェアリングと異なり、地域の人々が主体的に運営し、助け合いや関係を育むカーシェアリングである。具体的には以下2つの特徴がある。
第1に「支えあう地域づくり」が目的という点である。地域のサークル活動としてカーシェア会を組成している。一般的なカーシェアリングの利用に加え、病院までの送迎や住民同士の旅行(ドライバーはカーシェア会メンバーが担当)など、様々な活動が生まれている。第2に「住民同士でカーシェアリングを運営する」という点である。毎月集まっておちゃっこ(お茶を飲みながら、おしゃべりをする東北独自の文化)をしながら、利用ルールの決定、旅行の計画など無理のない範囲で役割分担をしている。経費面では、車の維持費や役員手当等、運営のためにルールを決めて積み立てを行い定期的に精算している。

JCSA平成30年度事業報告書によれば、石巻では9つのカーシェア会が存在しており、会員数は264名(前年度比+87名)、平均年齢は73歳(同+1歳)と活動は順調に拡大している。
アンケート調査では「居住する団地内に仲のいい知り合いがいますか」という問いに対し、CCS導入地域は未導入地域に比べ「たくさんいる」と答えた人の割合が約2倍となっている。CCSには移動の足を補うだけでなく、日常生活における楽しさやコミュニケーションを求めて参加している人々が存在しており、この点が一般的なカーシェアリングとCCSの最も大きな違いである。吉澤氏は「今後はCCSのノウハウを生かして石巻以外でも地域に応じた手法を作り出していきたい」と語っている。被災地以外にも人口減少による地域コミュニティの希薄化や交通弱者の増加などの課題を抱えた地域は多数存在しており、今後も増加する可能性が高い。全国共通の課題解決にCCSが各地域に適した形へと進化し、多くの課題解決につながることが期待されている。

JCSAの皆様(右:吉澤代表)
JCSAの皆様(右:吉澤代表)

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