コラム

2017/06/01たまには。昼休みとか?

調査本部 PPP推進部 研究主幹坂野 航

昨年、仕事の都合で米国ニューヨーク市の中心部、マンハッタンに数日間滞在する機会があったのだが、その際、街中で鮮やかな青色・同型の自転車を多く見かけた。
この自転車、現地ではBike Share、我が国ではコミュニティサイクルと呼ばれる、乱暴に言えば有料の貸自転車で、ニューヨーク市交通局が主導して取り組まれているシステムである。いわゆるレンタル自転車と異なるのは、貸出と返却が同一地点である必要はなく、ステーションと呼ばれる専用の自転車置き場間で自由に乗降ができる点にある。

こうした利便性の観点からだけではなく、自動車利用からのシフトによる二酸化炭素排出量の抑制、回遊性の向上による地域の活性化、二次交通などの公共交通機関の補完、観光戦略の推進、市民の健康増進など、社会経済的な効果への期待が大きいという特徴を有することから、マンハッタンだけでなく、世界各地で取り組みが進められている。
我が国でも、国土交通省「交通政策基本計画」(2015年2月)にてコンパクトシティ施策と連携した交通ネットワークとして2020年度までに100自治体での導入を目標に掲げており、87都市で本格導入されている1

東京都においても、千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、江東区の6区が主体となって、自転車シェアリングとの名称で実施されている。更には、広域相互乗り入れ実証実験として、期間中は区境を越えた自転車の相互乗り入れが可能となっており2、利用可能な乗降地点は約250ケ所、約3,300台の自転車が用意されている。

弊社の周辺にも、上記実験ではポートと呼ばれている複数のステーションがある。各種報道等によると、利用者数も大きく伸びているようで、実際、街中で利用者を見かけることも多い。一方で、そもそも知らない、という人も、まだ多いようだ。

前記のとおり、注意してみると街のあちこちにポートがあるのだが、知らなければただの自転車置き場に見えるかもしれない。ご存じなかった方は、お住まいの地域や訪問予定の地域にコミュニティサイクルがあるか、調べてみてはどうか。行動範囲が広がることで、意外な発見があるかもしれない。
ちなみに、同僚の中には、昼休みにこれを利用して遠方まで昼食をとりにいく猛者もいる。

1平成28年10月1日時点。国土交通省「コミュニティサイクルの取組等について」(平成29年3月)
2自転車シェアリング広域実験ホームページでは、当面の間、実験期間を継続するとしている。
https://docomo-cycle.jp/tokyo-project/

マンハッタンのグランド・セントラル駅。左下がステーションで、ブルーの自転車が貸し出し待機中。左隅は貸し出し中のために空となっているラック。

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