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2010/9

家庭で出来る温暖化対策!?

唐突に私事で恐縮ですが、私は猫と暮らしています。ブルーグレーの毛皮にエメラルドグリーンの目の持ち主。飼い主自らが言うのもなんですが、なんとも美しいイケメン猫。この猫、お澄まししていると、とっても高貴に見えるのですが、暑い日々が続くこの季節は、あられもない姿となります。

しかし、これぞ家庭における地球温暖化対策!!

暑さを凌ぐ工夫をすることで、少しでも冷房の温度を上げ、消費電力を抑える。こうした地道な努力が、今、一市民としての私たち一人一人に求められています。

地球の温暖化問題が指摘されて久しいところですが、その原因となる温室効果ガスの1つである二酸化炭素排出量をみると、日本全体で1,214.4百万トン。そのうち家庭からの排出量は171百万トン、その割合は14.1%と少なからずあります(2008年値。出典:温室効果ガスインベストリ。以下、同年データ、同出典。)。産業部門34.5%、業務部門19.4%、運輸部門19.4%に続く割合であり、製造業における生産過程から排出される割合(工業プロセス4.1%)よりも多いのです。しかも排出量の推移をみると、産業部門(1990年482百万トン→2008年419百万t)は減少傾向にあるなか、家庭部門は1990年に127百万トンであったのが、2008年には44百万トンの増加がみられます。

こうした現状を見るにつけ、家庭の責任も重いことがわかります。

産業部門では、大企業を中心に経団連の自主行動計画による削減目標を掲げ、日夜削減の努力がなされているようですが、家庭部門は一人一人の自主性、意識に任されているようです。そのため、毎日の暮らしのなかでのちょっとした心がけが期待されています。

全国地球温暖化防止活動推進センター(※)が『私たちができること-うちエコ!アクション-』というスローガンを掲げ、家庭での温暖化防止対策を推奨しています。「夏の冷房時の設定は28℃に」「冷蔵庫にものを詰め込み過ぎない」「シャワーの利用時間を1日1分短くする」など、“リビングで”、“キッチンで”、“お風呂で”すぐに取り入れられることばかりです。

今年の夏は、連日35℃を越える猛暑。冷房の設定を28℃にしても体感としてはかなり暑いですね。そういう時こそ、うちの猫のような工夫はいかがでしょ!

さすがにあのようなあられもない姿は・・・と、憚れるという方もいらっしゃるでしょう。そこは、ちょっと一工夫いただいて、暑い今年の夏を28℃の冷房設定でも快適に乗り切っていただければ、家庭部門からの温室効果ガス排出量の削減に少しでも貢献できるのではないでしょうか。

9月となりました。夜には鈴虫の音も聞こえて来ますが、まだまだ暑い日が続くようです。

こうした猛暑の日々だからこそ、少しばかり、地球温暖化対策に心を留めていただくのもよいかもしれません。

(※)全国地球温暖化防止活動推進センター
平成11年4月8日に施行された「地球温暖化防止対策の推進に関する法律」に基づき設定されたもので、地球温暖化対策に関する普及啓発を行い、地球温暖化防止に寄与する活動の促進を図ることを目的としている。

萩原利香
調査局
専門:PFI、環境


2010/7

世界のインフラ需要は4000兆円

昨年米国の金融機関モルガン・スタンレーグループがリリースしたレポートによると、2030年までに世界のインフラ構築・修復に必要な資金は4000兆円に達するそうです。非常に単純に考えて今から2030年までの20年で割ると年間200兆円になります。 新興国の都市化(=分散している人口が仕事を求めるなどの理由で都市部に集中していくことを指します)によって増加する交通量や電力需要、水道需要を充足させるために必要な額に加え、先進国のインフラ設備更新需要がこの金額を構成しています。

これは日本企業にとって大きな活路だと思います。

日本はかつてものづくり大国として海外に様々な商品を供給してきました。今はものづくりは世界のいろいろな国の人たちが意欲的に技術を学んだ結果日本の地位はかすみつつあります。海外に滞在するとほとんど日本以外のアジア主要国の製品ばかりが導入されています。これは新興国などでは自動車や電気製品に対して「高い品質高い値段」よりも「程ほどの品質で買える値段」の製品で良い、という人が多いからかもしれません。

一方で、日本の工業化と近代化を支えたインフラ技術、とりわけプラント技術と交通システムは真似だけでは技術が移転されにくい、長い時間をかけて導き出された繊細なノウハウが不可欠な分野だと思います。水道も凡そ日本にある上水道の蛇口から飲む水でお腹をこわす確率は、経験上世界的に最低水準と考えられます。

よく日本のインフラ技術の最大の弱点はアピール下手なところだと言われます。売り込み方をもっと戦略的にし、チームワークで売り込むことで「世界が認める日本の技術」のブランドが復権するかもしれません。これからの日本の「ものづくり」には金融機能と情報機能の2本のレールが必要なのだと思います。

八木田聖三
ソリューション局
主任研究員


2010/6

医療人を育てるヒント

医療機関の中では「患者様の立場に立って」という言葉をよく耳にするが、そんなことが果たして可能だろうか?もちろん重要なことであるが、私は相当難しいことだと思っている。この言葉を平気で口にする人は、本当は実践出来ていないのではないか?

例えば、注文住宅メーカーの営業マンは一生の内に何人の新しい顧客と会うのだろうか?約10,000人として(2人×200日/年×25年)、顧客にとって家を建てることは一生の内に1度か多くても2度であろう。まさに「1/10,000」と「1/1」であるが、この10,000人が家を建てる事情や思い入れ、要望、家族構成等は千差万別であり、10,000通りの家が建つことになる。顧客の立場に立てる本当のプロとは、この「1/10,000」を自分の中で少しでも「1/1」に近づける努力を惜しまない人のことであると思う。

一般の人にとって、入院・手術ということは一生の内に何度もないことであるが、医師や看護師にしてみればそれが仕事なのだから日常茶飯事である。だから「患者様の立場に立って」とよく言うが、それは非常に難しいことであり簡単にできることではない。大切なことは、患者様の立場に一歩でも近づくように努力することである。

人の評価の対象となる「能力」とは何であろうか?医療機関は専門職集団であり、資格さえあれば一定の評価を受けるという部分もあるが(保有能力の評価)、それ以上に重要な要素は、その有する能力をいかに効果的に活用しているか、という視点からみた「発揮能力」を評価することではないか?

もちろん、発揮能力だけで評価することは妥当ではない。様々な評価要素(現在の保有能力、能力向上プロセス、発揮能力等)をバランス良く組み合わせて評価することが重要となろう。また、職位や職務経験等に応じて、プロセス重視→発揮能力重視というように、段階的に評価要素のウェイトを変化させていくことも必要である。

人材育成に関して、医療機関が異業種に学ぶべき事柄も多いのではないだろうか?例えば、「接遇」は職種を問わず社会人として身に付けておくべき最低限のルールであるとともに、患者様サービスの中でも非常に重要な要素である。何故「接遇のプロ」とされているホテルや百貨店等に学ばないのか?多少の違いはあるにしても、彼らが持つ接遇ポリシーやノウハウ等は大いに参考になるだろう。医療機関という狭い殻に閉じこもっている限り新しい発想はなかなか生まれないし、真の患者様サービスも実現できないのではないか。

そこで、人材育成カリキュラムの1つの手法として、職員を異業種企業(ホテル・百貨店等の他、医薬品・医療機器等の取引先や健診実施先企業等)に一定期間(まず短期、徐々に長期も検討)派遣するというメニュー(いわば他流試合)を実践してはどうか。人材育成面に加え、受入先との関係強化という副次的効果も期待できよう。

丸田浩一
調査局
専門:医療・福祉


 

2010/5

にわかファン

東京・銀座の歌舞伎座が先月30日で昭和26年のこけら落としから数えて59年間の幕を閉じた。4月28日は大千穐楽、30日には閉場式が執り行われたという。この一連の興行は早々に前売りチケットが完売、当日券を求める人が徹夜で列をつくるという熱狂ぶりも報道された。かくいう私はこの4月のさよなら公演で初めて歌舞伎を観た、にわか歌舞伎ファンなのだが。

歌舞伎公演を観て感じたのは江戸時代から続く伝統芸能とはいうものの、その発祥を今も受け継ぐ「庶民の芸能」であるということ。大向こうからは「成田屋!」「中村屋!」と贔屓の役者に掛け声がとび、役者の大見得を引き立てる。幕間には和服姿の観客がそこかしこに集い、お弁当や土産を求める姿がみられ、他の劇場にはない独特の空気感がある。公家や武家など時の権力者のための芸能ではなく、江戸の庶民が育んできた芸能の雰囲気が今も息づいている。

さて、歌舞伎座はこれから2年11カ月の歳月をかけて上部はオフィスビル、下層に新歌舞伎座を配した地上29階建ての複合ビルに建て替えられる。この手法は都心の一等地に建つ伝統建築物を再開発する手法として常套化しており、最近では丸の内の三菱一号館や明治生命館などで採用されている。高容積率の土地を有効に利用して上層オフィスビルで安定した収益を得ながら、下層に伝統的建築空間を残そうという狙いだ。この手法の多くは下層部分を美術館や資料館などで再利用している。往年とは違う用途として命を再度与えようというわけだ。

しかし歌舞伎座建て替えは少々状況が異なると私は思っている。つい昨日まで役者、観客が一体となり庶民の娯楽として息づいていた、いわば「生きたハコ」の建て替えだ。建て替え期間は一時的に興行場所を移すものの、3年後には再び命を吹き返さなければならない。これまでの伝統建築物の保存、再生とは異なるのだ。 新歌舞伎座の設計者には建築家の隈研吾氏が選ばれたそうだ。今もなお生き続けている芝居小屋の再建を建築家がいかに解釈し、再び蘇らせてくれるのか。3年後の「生きたハコの再現」を楽しみにしたい。

また、「ハコとしての再現」とともに、「庶民の芸能」として、昔からの贔屓客に加え、私のようなにわかファン、あるいはまだ歌舞伎を観たことがない学生らが気軽に訪れ、日常とは少し違った劇場空間や伝統芸能を楽しめる場になってほしいと思う。なぜなら、「芸術」「文化」というと、敷居が高くとっつきにくいと感じてしまうが、今回「建て替えられる前にみてみたい」というミーハー的な気持ちでいざ観てみれば、役者の迫力や観客を含めた劇場の雰囲気にすっかり魅了されてしまったからである。きっかけをつくり、一度体験するということが大事ではないだろうか。

全国に多くのホールや劇場があり、その運営に苦慮されているが、これは、歌舞伎に限らず、他の演劇や音楽も同じではないだろうか。今回をきっかけに、歌舞伎だけでなく、他の演劇なども、生で体験してみたいと感じた次第である。

足立文
調査局
専門:PPP、事業評価


2010/4

『エジプト点描~グローバル化に乗り遅れるのは誰か』

若者のクルマ離れ

研究員の仕事は、データ・事実に基づく分析、大胆な仮説設定と緻密な検証、パラダイムの転換を迫る報告、実行可能なプランの提示である。この過程で、個人的な印象や想像力の果たす役割は大きい。グローバル化が進み、情報が広く共有される現代でも、実際に訪問・滞在すると全く違った姿が見えてくる。

仕事でエジプトを訪れた。同国は、中東、欧州、アフリカの結節点にあり、湾岸諸国と共通の言語を話し、地理的・文化的に枢要な地位を占める。日本の約三倍の国土、ナイル川沿いに約8,000万人が住み、農業、工業、観光業などを中心としたGDPはフィリピンやアルジェリアと同規模である。人口はヴェトナムやトルコとほぼ等しく、一人当たりGDPは約2,000米ドル(2008年)と、ヴェトナムの約2倍、トルコの約五分の一で、インドネシアやフィリピンと同じレベル、購買力平価ベースではタイと並ぶ。

まず、首都カイロの交通事情に驚く。地下鉄の路線は少なく、路面電車は取り除かれ、郊外からの通勤客は都心ターミナルに集まり、ワゴン車を改造したミニバスでオフィスや工場に向かう。朝夕の渋滞の中、1980年代の車が接触寸前まで近づいて走り、信号はほとんど無く、道路横断は冒険、警笛の中、2車線道路を3台が並んで走る。伸びゆく国のダイナミズムを感じるが、ビジネス街が未整備であることもあって、欧米風の小ぎれいな理想的グローバル都市には程遠い。

我々の訪問先は、高い教育を受けた人々が指導的地位を占める政府や金融機関などであるが、街に出ると、都会でも貧富の差は凄まじい。国民の八割が貧困層と言われ、過去40年余り、食料、ガソリン、プロパンガス等への手厚い補助金政策が続いている。補助金は予算の3-4割を占めるが、パンの2割が消えるなど不正の温床となり、受益の不均衡が経済をさらに歪める。グローバル経済変動の影響云々以前の問題である。金融市場は、グローバルなリンケージが小さく、昨今の不況の影響は少ない。怪我の功名である。

ナセル元大統領が今も国民に慕われる理由は、公教育の無償化など、教育に注力したことにある。普通の階層の家庭でも学校にはきちんと通わせて、特に英語の学習に力を入れている。富裕層は大使館街にある私立小中学校に子供を送迎し、さらに欧米系列の私立大学(American University in Cairoの類)に進ませて、英語で高等教育を受けさせ、欧米、アラブのそれぞれ多様な文化に触れ、国際社会で生き抜く力を養っている。

世界のかなりの数の国で、依然として旧植民地の支配者(マスター)意識と被支配者(サーバント)意識を巧みに利用した統治がなされている。エジプトでは、EU、米、中国などの利害が錯綜し、その代弁者はさらに輻輳しているものの、その言葉の端々にアラブ共和国としての誇りが感じられる。英語が通じるが、アラビア語を学ばない輩は信用されない。西欧的な自由を謳歌しながら、国民の9割はイスラム教徒であり、女性の裁判官任用に国会議員の過半数が反対し、国際機関出身の大統領候補には人気が無いなど、複雑な思いも垣間見える。

エジプトは、今や通常の国として、自国の文化に誇りを持ち、貧富の差など様々な矛盾を抱えながらも、教育に投資し、試行錯誤を重ねつつグローバル化に対応しようとしている。翻って、はるかに経済規模が大きく、豊かであるはずなのに、高校生や大学生の海外留学希望者が激減し、皆、内向きの論理で、目先の事柄だけを考えている国は、かえってグローバル化に乗り遅れてしまうのではないだろうか。自らの理念を保ちながら、エジプトやヴェトナム、インド、トルコなど、急速に発展しつつある各国のグローバル化への取組の良い所を取り入れていくことが必要なのではないだろうか。

ところで、ギザ地区のピラミッドを近くで見ると、縦横高さ1-3メートルの直方体の石を積み、一部は日本の城の城壁のようにすり合わせてあり、近景は段々になっている。小さなfact-based analysisを丹念に積み重ねて、大きな構造物を詳細に作る、という調査研究の基本を見た思いである。5,000年の智恵は今に生きている。

泉 比砂志
国際局


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